ご家族が亡くなると、基本的に相続が発生します。亡くなった方の遺した財産によっては相続税を支払わなければならない場合もあります。
「先日、夫が亡くなりました。葬儀は無事に終えましたが、相続税が心配でなりません。葬儀にかかった費用は相続税から控除できるのでしょうか?」このような相談がありました。
今回、解説する記事の内容をまとめました。
- 相続税は、亡くなった人から相続又は遺贈によって遺産を取得した方が、取得した遺産の評価額に応じて負担する税金のこと
- 遺産があった場合に必ず相続税がかかる訳ではないが、相続税が発生する場合に葬儀費用は控除対象となる
- 控除の対象となる葬儀費用は、葬儀で一般的(常識的)に適切な費用というのが条件
- 葬儀後に発生する墓の購入などの費用は、ほぼ控除の対象外、香典返しも対象外
- 通夜や告別式など葬儀の場での飲食代は葬儀費用に含まるが、生花代についてはすべてが葬儀費用に含まれるという訳ではない
- 遺産から葬儀費用を負担した後でも、相続放棄をすることが可能な場合もある
- 相続財産を葬儀費用の支払いにあてる場合は、必ず葬儀時の領収書や明細書を保管しておく
- お布施など領収証がない費用については、「いつ・誰に・なんのために・いくら支払ったか」をメモに残しておくと控除対象となる
- 相続財産を葬儀費用の支払いにあてる場合は、葬儀自体の内容も故人の生前の状況に見合ったものでなければなならない
この記事を読めば、相続した財産から葬儀費用を控除する方法や注意点について詳しく知ることができます。
この記事の執筆者
執筆者 北原美弥子
FP技能士2級保持。長年にわたり企業の経理部に在籍した経験から、財務、法務の知識も備える。資産運用、保険に関する記事の執筆に加え、近年は墓じまい、永代供養に関する記事を多数執筆。
この記事の執筆者
執筆者 北原美弥子
FP技能士2級保持。長年にわたり企業の経理部に在籍した経験から、財務、法務の知識も備える。資産運用、保険に関する記事の執筆に加え、近年は墓じまい、永代供養に関する記事を多数執筆。
相続した財産から葬儀費用を控除する方法
相続した財産から葬儀費用を控除するにはどうしたら良いのかわからないという方が多いと思います。相続した財産から葬儀費用を控除する方法について詳しく解説しましょう。
そもそも相続税とは?
相続税は、亡くなった人から相続又は遺贈によって遺産を取得した方が、取得した遺産の評価額に応じて負担する税金のことですが、 遺産があった場合に必ず相続税がかかる訳ではありません。
遺産額が基礎控除額以下の場合には、相続税はかかりません。基礎控除の額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で、この基礎控除を遺産から差し引いてマイナスになるなら相続税はかからないのです。一般的には相続税を納めない方の割合が多いです。
相続した財産から葬儀費用を控除する方法
先に述べたように相続税は財産すべてに課税されるわけではなく、故人の借金など相続財産から控除できる費用も考慮して税金が計算されます。葬儀費用も控除対象となり、遺産の総額から差し引くことができます。
ただし、相続税の計算は税法の知識がないと難しく、不備があった場合にはペナルティが課せられる場合もあります。相続税が発生する可能性があり、複数人の相続人がいる場合には税理士に依頼するのが良いでしょう。
相続した財産から葬儀費用を控除できる人は?
相続した財産から葬儀費用を控除できるのは、葬儀費用を支払った相続人です。とはいえ、実際には葬儀費用は故人の遺産から支払われることも多くあります。
葬儀費用は故人の遺産から支払った場合も、故人の配偶者か子供など一番身近な相続人が立て替えて支払った場合でも、申告時に葬儀費用として認められている金額を遺産の総額から差し引くことができます。
相続した財産から葬儀費用の控除はどこまでされる?
葬儀費用は控除の対象となりますが、葬儀にかかった全ての費用が対象となる訳ではありません。控除対象となる費用とならない費用をまとめてみました。
控除対象になる葬儀費用は以下の通りです。
- 医師の死亡診断書
- 通夜、告別式にかかった費用
- 葬儀場までの交通費
- 葬儀に関する飲食代(通夜、告別式)
- 遺体の搬送費用
- 火葬料、埋葬料
- 手伝いへの心付け
- 僧侶などへのお車代
- お布施、読経料、戒名料
- 納骨費用
- そのほか通常葬式に伴う費用
控除の対象とならない葬儀費用は以下の通りです。
- 香典返し
- 参列者による生花、お供え
- 位牌、仏壇の購入費用
- 墓地、墓石の購入費用・墓地の借入料
- 遺墓石の彫刻料
- 法事(初七日、四十九日)に関する費用
- 医学上または裁判上の特別の処置に要した費用
- そのほか通常葬式に伴わない費用
被相続人の死亡後に葬儀費用を銀行から引き出す方法
以前は遺産分割協議の手続きが済むまで銀行口座からお金を引き出すことはできませんでした。しかし、2019年の相続法改正により「預貯金の仮払い制度」が新設され、遺産分割前でも、故人の預貯金を単独の相続人が引き出すことが可能となりました。
引き出しは金融機関の窓口で直接行います。ただし、金額は「相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分(その相続人の法定取り分)」という上限額が決められています。また、金融機関ごとに150万円までとされています。
飲食代や生花代は葬儀費用に含まれる?
通夜や告別式など葬儀の場での飲食代は葬儀費用に含まれます。生花代についてはすべてが葬儀費用に含まれるという訳ではありません。
生花は、「喪主が支払いを負担したもの」は葬儀費用として認められますが、「参列者が支払った供花」は葬儀費用に含めることはできません。
遺産から葬儀費用を負担した場合は相続放棄はできる?
結論を言うと、遺産から葬儀費用を負担した後でも、相続放棄をすることが可能な場合もあります。
遺産から葬儀費用を負担した場合、「法定単純承認(相続財産の全部または一部の処分すること)」から相続放棄ができなくなると思っている方がいますが、葬儀費用を被相続人の財産から支出しても、それをもって法定単純承認したとはみなされません。
葬儀費用を相続した財産から支払う場合の注意点
相続財産を葬儀費用の支払いにあてる場合は、必ず葬儀時の領収書や明細書を保管しておきましょう。葬儀費用によっては、お布施など領収証がないものもありますが、その場合は内容を詳しく記載したメモでも大丈夫です。
故人が生前に互助会などの積立をしていて、その積立金を葬儀費用の一部にあてた場合には、積立金充当分の葬儀費用は控除対象にならないので注意しましょう。
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