【FP監修】社葬にかかる費用の相場 | メリット・デメリットは?

社葬にかかる費用の相場

社葬とは、会社が主体となって行う葬儀の形式です。社葬と聞くと、大企業が執り行うイメージがありますが、税制上のメリットもあるため中小企業でも社葬を行うことが増えています。

「夫は入院中で先が長くないようです。夫は親族で経営している会社の会長なのですが、小さな会社でも社葬はできるのでしょうか。」このような相談がありました。

今回、解説する記事の内容をまとめました。

  • 社葬とは、会社が主体となって執り行い、費用の負担も行う葬儀形式
  • 社葬というと大会社が行うイメージがあるが、中小企業でも100名以下の社葬が行うことはできる
  • 社葬にかかる費用は100名程度の小規模なもので、300万円程度
  • お寺で行う葬儀の平均費用は、祭壇、読経・戒名のお布施などを含めて平均100万円前後
  • お社葬にかかる費用は、経費として損金計上ができるが、火葬費用や戒名のお布施などは遺族の負担となる
  • お社葬は、遺族は負担が少なく済み、会社は経費計上ができるなど、ともにメリットがある葬儀形式
  • デメリットとしては、社員の負担が大きく、遺族が置き去りになる場合もある点が挙げられる

この記事を読めば、社葬の費用や一般葬との違い、税務上の注意点や葬儀の流れまで詳しく知ることができます。

この記事の執筆者

筆者:北原 美弥子

執筆者 北原美弥子

FP技能士2級保持。長年にわたり企業の経理部に在籍した経験から、財務、法務の知識も備える。資産運用、保険に関する記事の執筆に加え、近年は墓じまい、永代供養に関する記事を多数執筆。

目次

社葬とは?

社葬とは、会社が主体となって執り行い、かつ費用の負担も行う葬儀のことを言います。社葬の場合は、会社に貢献した方をたたえる意味がありますが、故人が亡くなった後の会社の体制を伝えたり、会社の結束を図る意味もあります。

社葬にはいくつかの形式があり、「通夜は身内だけで行い、告別式のみ社葬として行う」「通夜、告別式、火葬までを社葬として一般葬と同じように行う」「いったん密葬で火葬まで済ませ、後日改めて本葬として社葬を行う」などのやり方があります。

社葬は、会社の創業者、社長、大きな功績を残した方に対して行われることがほとんどですが、長く勤めてこられた方や業務中に亡くなった方についても社葬で弔うことがあります。

社葬でかかる費用の相場を紹介

社葬の費用はすべて会社負担になるのでしょうか。遺族が負担しなければならない費用はあるのでしょうか。参列者の人数なども含めて社葬でかかる費用の相場を解説します。

社葬は喪主は遺族、施主は会社がつとめるのが基本

社葬は、基本的には喪主を故人の配偶者か子供など遺族が務め、施主を会社がつとめることとされています。つまり、葬儀を執り行うのは会社ということです。葬儀の費用は会社が負担します。

社葬でも、通夜だけは親族で行い、告別式のみを会社が執り行う場合や、密葬として先に親族だけで葬儀を行い、のちに「お別れ会」の形で会社が主催する方法もあります。

親族経営など小さな会社で社葬で行う場合には、通夜、告別式、火葬までを会社が施主として行う方が向いています。

社葬に参列する人数

昔の社葬は、千名以上の参列者が来る社葬が一般的でしたが、現在は社葬の規模も縮小しており、100名程度から多くても500名程度が参列するのが一般的となっています。

コロナの影響により、あまり多くの参列者を呼ぶ葬儀自体ができなくなってきたのが大きな理由です。また、大会社が社葬という形をあまり取らなくなっていることも理由の一つです。

反対に増えてきているのが、中小企業の社葬です。100名程度の参列者で小規模な社葬を行う企業が増えています。葬儀費用を経費として損金計上できるのも中小企業にとってはメリットです。

社葬でかかる費用【100人の場合】

家族経営などの小さな会社で行う社葬の場合、100名程度の社葬となることが多いようです。親族のほか、会社の社員、主な取引先などが参列するのをイメージしてください。

項 目内 容料 金
葬儀費用一式・ご遺体の搬送・安置
・祭壇
・役所手続き代行
・施設使用料
150万円〜
葬儀以外の費用・読経のお布施50万円〜
・通夜等の飲食代50万円〜
・遺族送迎交通費
・僧侶お車代
・担当社員交通費
10万円〜
・当日返礼品30万円〜

100名程度の社葬にかかる費用は平均300万円前後です。祭壇などのランクを落とせばもっと費用を抑えることはできますが、社葬である以上は一定以上のランクを選んだ方が良いでしょう。

戒名のお布施は、基本的に親族が負担します。火葬費用やその後の納骨費用、お墓関連の費用についても親族が負担します。

社葬と一般葬の違い | 社葬の割合は?

社葬と一般葬はどのような点が違うのでしょう。また、社葬を行う割合はどの程度あるのでしょうか。

社葬と一般葬の違い

社葬と一般葬の違いは一言でいうと、誰が施主となるかです。施主とは葬儀を主催する立場をいいます一般葬の場合、喪主も施主も親族となりますが、社葬の場合は、喪主が親族、施主は会社です。

社葬と一般葬では、参列者も異なります。社葬の場合は、故人の会社関連の付き合いが合った方が多く呼ばれます。一般葬の場合、会社関連の方も呼ばれますが、故人のプライベートで付き合いのあった方の割合が多くなります。

社葬独自の形式として、会社に葬儀委員会を設置し、葬儀の最高責任者として葬儀委員長を置きます。葬儀委員長は、会社の社長や重役がつとめます。

社葬の割合は?

調べてみましたが、葬儀全般における社葬の割合は明確なデータが見つけられませんでした。

ただ、何年か前の葬儀会社のアンケートによると、葬儀全体の3〜5%程度のようです。

近年は、家族葬や直葬の割合が増加しているので、葬儀全体から見ると社葬の割合はかなり少ないのではないでしょうか。

社葬にするメリット・デメリット

社葬を行う場合、そのメリット・デメリットをよく理解しておくことが必要です。社葬にするメリット・デメリットを挙げてみましょう。

社葬にするメリット

社葬にするメリットとして、会社は社葬の費用を経費計上ができるという税法上のメリットがあります。

遺族にとっては、会社が葬儀費用を負担してくれるので費用負担が減る点が挙げられます。社葬という名誉な形で故人を送ることができ、葬儀の手続きを会社に任せられ喪主に専念できる点もメリットといえます。

社葬は遺族と会社が親密になり、双方にメリットのある葬儀形式です。会社に功績を残した故人を弔う意味でも望ましい葬儀をすることができます。

社葬にするデメリット

社葬は会社が施主となるため、社員の負担が大きくかかるのがデメリットといえます、葬儀の間会社を休業しなければならない場合もあります。また、葬儀が会社側がメインとなりすぎて親族が置き去りになってしまうこともあります。

社葬の場合、葬儀の受付や進行など会社の社員が行うのがほとんどです。通夜振る舞いなどの場でも参列者に会社関係者が多いため、主に社員が接待を担います。

一般的な葬儀であれば、これらは喪主である親族が担う役目ですが、社葬の場合、会社関係者も多く参列するため仕方がない部分もあります。トラブルにならないよう遺族の意向も充分に考慮することが必要です。

社葬の際の読経料や戒名料は会社が負担する?香典収入は?

葬儀の読経料と戒名料はどちらもお布施として僧侶に支払うものです。読経のお布施は会社が負担し、戒名のお布施は遺族が負担します。

読経のお布施を会社が負担するのは、読経は葬儀の一部であり、社会通念上相当と認められる金額であれば経費として損金計上できると法人税法で決まっているからです。

戒名は遺族に属するもので、会社の経費にはできません。そのため遺族側で負担することになります。いただいた香典については、基本的にはすべて遺族に渡されます。

社葬の税務上の注意点 | 勘定科目は特別損失?

社葬の費用で経費として損金計上ができるものとできないものがあるのが、税務上の注意点として挙げられます。葬儀に関連する内容の費用は損金計上ができますが、先に挙げた戒名のお布施や仏壇、お墓など遺族に属するものは計上できません。

経費として認められる費用も、社会通念上相当と見なされる部分までとされており、あまりに法外な費用の場合、損金として認められないこともあります。社葬を行った場合の勘定科目ですが、葬儀費用は一般的には福利厚生費が使われます。

通夜などの飲食代で会社関連の参列者が多い場合には、その分は交際接待費を勘定科目とする場合もあります。また、故人に対して、会社から高額の弔慰金を支払った場合は、特別損失として計上します。

社葬を行う場合の流れ

では、社葬を行う場合の流れについて、かんたんに説明しましょう。今回は「通夜・告別式・火葬」を行う小規模の社葬の流れを例として挙げてみます。

社葬の前準備

1.遺族の意向を伺う

社葬を執り行うにあたって、特に大切なのは遺族の意向です。担当者は社葬取扱規程に沿って速やかに行動しつつも、遺族に寄り添い、できる限りサポートを行うことが大切です。

2.逝去直後の社内対応

訃報を受けたら、緊急連絡体制、緊急連絡網に基づき、各関係者へ連絡していきます。あらかじめ知らせるべき担当者や部署を決めておくと良いでしょう。

3.緊急役員会の開催

遺族の同意が得られ、正式に社葬の執行が決まったら、社葬取扱規程に沿って、速やかに準備を進めていきます。まずは社葬における基本方針を決めるため、緊急役員会を開きます。

緊急役員会では、社葬の規模や形式、葬儀社および式場・日時・予算などの決定を行います。同時に葬儀委員と葬儀委員長を決めます。

4.葬儀社との打ち合わせ

社葬の内容について葬儀社と相談しながら決めていきます。葬儀社は社葬を担当した実績がある葬儀社を選ぶと良いでしょう。打ち合わせ時には、遺族の意向も反映するよう留意しましょう。

5.社内通達・社外通知

まず社内に社葬の通達を出します。社内通達はできる限り速やかに行いましょう。次に取引先など社外に社葬の通知を出しますが、急ぎの場合はFAXやメールなどで通知しても構いません。

6.社内の係の振り分け

運営本部、広報、受付、会計、案内、記録、来賓対応など社内で役割を決めます。

社葬当日の流れ

1.葬儀社、喪主との最終打ち合わせ

葬儀委員の社員は、2〜3時間前に式場に行き、葬儀社、喪主と最終的な打ち合わせを行い流れを確認します。大きな会社の場合、前日にリハーサルを行うこともありますが小規模な社葬の場合はなくても良いでしょう。

2.遺族の送迎

実際は、遺族は自分達で式場まで来ることもありますが、故人の家族などは会社が迎えの車を準備するのがマナーです。

3.参列者の受付

参列者の受付は、担当社員が行います。香典は葬儀中にまとめておき、葬儀の後に遺族側の担当者に渡しましょう。後日参列者リストと共に渡しても構いません。

4.葬儀

通夜、告別式などの一連の流れは一般葬と同じです。社葬の場合、司会を葬儀委員がつとめるのが一般的です。故人の経歴紹介、弔電の紹介なども葬儀委員が行います。

参列者への挨拶は、先に葬儀委員長が行い、次に喪主の挨拶となります。

5.火葬の見送り

式が終了したら、火葬場へ向かう遺族を見送ります。火葬場まで行くのは主に遺族やその親族となり、会社関係者は遠慮する場合が多いようです。

6.葬儀社への精算

社葬が滞りなく終了したら、弔電や参列者名簿を整理して遺族に渡します。香典を遺族に渡している場合は、返礼品は遺族が負担して手配します。

社葬終了後

社葬が滞りなく終了したら、弔電や参列者名簿を整理して遺族に渡します。香典を遺族に渡している場合は、その返礼は遺族が負担して手配します。

会社の会計担当者は会計報告書や社葬報告を作成し、会社で保管・管理します。

社葬を行った場合、葬儀費用の多くは経費計上ができますが、中には遺族が負担するものとして経費にできないものもあります。あとでトラブルにならないよう、会社が負担する費用と遺族が負担する費用は明確にしておくことが必要です。

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葬儀保険は、本人の死亡の際、保険料が速やかに支払われるので、葬儀費用の負担を抑えることができます。

無告知型葬儀保険

無告知型葬儀保険は、加入するときに医師の診断書や健康告知などが必要ない保険です。疾病がある高齢の方でも加入しやすいのが特徴ですが、健康告知ありの保険に比べると保険料がやや割高になります。

40歳から79歳まで加入できます。保険期間は1年で、最大99歳まで更新が可能です。プランは1口(10万円)から最大10口(100万円)まで選べます。

契約日から3ヶ月間は待機期間のため、保険金は支払われません。申込時点で、本人が入院中であったり、著しい認知などで要介護の場合は、保険に加入できません。

【こんな方におすすめ】

  • がんや脳梗塞などの疾病で、他の保険に加入できない方

保険料一定型葬儀保険

保険料一定型葬儀保険は、一定の保険料を支払い続ける保険です。支払い保険料が一定である代わりに、年齢が進むにつれ受け取る保険金が減少していきます。

40歳から84歳まで加入できます。保険期間は1年で、最大99歳まで更新が可能です。支払方法は月払いのみです。医師の診断書は不要ですが、入院中や要介護の方は加入できない場合もあります。

契約日から1ヶ月間は待機期間のため、保険金は支払われません。支払う保険料は、1年ごとの更新時にのみ増額・減額変更が可能です。

【こんな方におすすめ】

  • あまり高い保険料は支払ないが、葬儀の費用は少しでも準備しておきたいという方

保険金固定型葬儀保険

保険料一定型葬儀保険は、受け取る保険金が固定されている保険です。年齢に関わらず変わらない保険金を受け取れますが、代わりに年齢が進むにつれ支払う保険料が増加していきます。若い年齢で加入するほど保険料は安く済みます。

40歳から84歳まで加入できます。支払方法は月払いと年払いがあります。医師の診断書は不要ですが、入院中や要介護の方は加入できない場合もあります。

契約日から1ヶ月間は待機期間のため、保険金は支払われません。受け取る保険金の額は、1年ごとの更新時にのみ変更が可能です。

【こんな方におすすめ】

  • 年齢はまだ若いが、万が一に備えて葬儀費用を準備しておきたいという方
  • 葬儀費用はある程度の額が必要だという方
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