従来の日本では、火葬された故人の遺骨はお墓に埋葬されるのが一般的でした。しかし、近年はお墓に入るのでなく、海への散骨を望む方が徐々に増えてきています。
「自分が亡くなったら、お墓ではなく海に散骨してもらいたいと考えています。その場合の費用はどのくらいかかりますか?また、デメリットはあるのでしょうか?」このような相談がありました。
今回、解説する記事の内容をまとめました。
- 「散骨」とは、ご遺骨を粉末にして海・山・空などに撒き、自然に返す葬送方法のことで、海に遺灰を撒く「海洋葬」、里山の森林に散骨する「樹木葬」などがある
- 海に散骨する場合、まずご遺骨の粉骨に3万円程度の費用がかかり、その後プランにより5万〜35万円程度の費用がかかる
- 海に散骨するメリットとして、お墓の維持や管理をしなくて済むことが挙げられる。また埋葬費用が必要ないため、費用が格段に抑えられることもメリットの一つ
- 海に散骨するデメリットとして、お墓参りをすることが難しいという点がある。また、すべてのご遺骨を散骨してしまうと二度と元に戻すことができないので、のちに遺族が後悔する場合もある
- 一定のルールや節度を守って散骨するのであれば、基本的には、自分で海に散骨することはできるが、船の手配や散骨する場所の選択など面倒なことが多く、業者に依頼する方が良い
- 基本的には、海への散骨に許可は必要ない。法律上、散骨に関する取り決めがないため、ほとんどの地域では許可を申請することなく散骨が可能
- 法律上の規制はないが、自治体によっては散骨に関する条例が制定されている場合もあり、業者に依頼した方がトラブルがなくて済む
- 海に散骨する場合の費用を安く抑えるには、「代行散骨のプランを選ぶ」「複数の業者で比較をする」などがあるが、あらかじめ費用準備のために葬儀保険に加入するのもおすすめ
この記事を読めば、海に散骨する場合について、費用やメリット・デメリット、注意しなければならないことまで詳しく知ることができます。
この記事の執筆者
執筆者 北原美弥子
FP技能士2級保持。長年にわたり企業の経理部に在籍した経験から、財務、法務の知識も備える。資産運用、保険に関する記事の執筆に加え、近年は墓じまい、永代供養に関する記事を多数執筆。
この記事の執筆者
執筆者 北原美弥子
FP技能士2級保持。長年にわたり企業の経理部に在籍した経験から、財務、法務の知識も備える。資産運用、保険に関する記事の執筆に加え、近年は墓じまい、永代供養に関する記事を多数執筆。
散骨とは?
「散骨」とは、ご遺骨を粉末にして海・山・空などに撒き、自然に返す葬送方法のことをいいます。
近年、散骨が注目を集めるようになったのは、核家族化によってお墓の維持をする人が減っていることや、亡くなったあとは自然へ回帰したいと願う方が増えてきたためです。
海に散骨する場合の費用の平均
海に散骨する場合、まずご遺骨の粉末化(粉骨)に3万円程度の費用がかかります。その後、海に散骨することとなりますが、散骨には、大きく分けて「貸切型」「合同型」「代行型」の3種類があります。
貸切型散骨
貸切型散骨の費用平均は以下の通りです。
項 目 | 内 容 | 費 用 |
---|---|---|
貸切型散骨 | 1隻の船を1家族で貸切って行う海洋散骨プラン | 15万円~35万円 |
貸切型散骨は船のチャーターにかかる費用やスタッフの費用、燃料費など1家族が負担しなくてはならないため、費用は比較的高めになります。
合同型散骨
合同型散骨の費用平均は以下の通りです。
項 目 | 内 容 | 費 用 |
---|---|---|
合同型散骨 | 1隻の船を複数の家族で利用する海洋散骨プラン | 10万円~20万円 |
合同型散骨は、複数の家族で利用するため、貸切型の海洋散骨に比べ費用が抑えられるのが特徴です。ただし、1家族で乗船できる人数は限られます。
代行型散骨
代行型散骨の費用平均は以下の通りです。
項 目 | 内 容 | 費 用 |
---|---|---|
代行型散骨 | 業者が複数の遺骨を預かり、まとめて散骨する海洋散骨プラン | 5万円程度 |
代行型散骨は、業者が遺族の代わりに海洋散骨を行うものです。複数のご遺骨をまとめて散骨するため、費用がもっとも安く済む散骨方法です。
海に散骨するのはどんな場合? | メリット・デメリット
海に散骨するのは、どのような場合に向いているのでしょうか。また、海に散骨するに当たってはそのメリット・デメリットを詳しく知っておくことが必要です。詳しく説明しましょう。
海に散骨するのはどんな場合?
海に散骨するのを選択する場合、さまざまな理由があると思います。例えば「海が好きだった」「お墓には入るのは嫌」など、故人の意志を尊重して海洋散骨を選択するのが一つでしょう。
あるいは、「子供がいない、お墓を守る人がいない」「費用が高いお墓を用意できない、お墓がない」など継承者や費用面の問題から、海に散骨することを選ぶ方も多くいます。
海に散骨するメリット
海に散骨するメリットとして、お墓の維持や管理をしなくて済むことが挙げられます。近年は、お墓を管理する人がいなくなり無縁墓になってしまう例が問題になっています。海に散骨する場合は、そのような心配をせずに済みます。
また、埋葬費用が必要ないため、費用が格段に抑えられることもメリットの一つです。一般的なお墓の場合、土地や墓石の購入費用などで約200万円かかるといわれていますが、海洋散骨はお墓の10分の1ほどの費用で供養ができます。
海に散骨するデメリット
海に散骨するデメリットとして、お墓参りをすることが難しいという点があります。また、海のどこかという漠然としたイメージしかないため、遺族の気持ちのより所がないこともあるでしょう。
また、すべてのご遺骨を散骨してしまった場合、二度と元に戻すことができません。手元にご遺骨が残らなくなって、あとで後悔するご遺族もいます。ご遺骨の一部は残して手元供養する方がよいでしょう。
海への散骨は自分でできる?遺骨を粉末にする方法は?
海への散骨は、業者に依頼せずに自分で行うことができるのでしょうか。また、散骨するに当って、ご遺骨を粉末にすることも自分でできるのでしょうか。
海への散骨は自分でできる?
一定のルールや節度を守って散骨するのであれば、基本的には、自分で海に散骨することはできます。
ただし、船の手配や散骨する場所の選択など面倒なことが多いため、ほとんどの方は自分で海に散骨をすることはありません。
ご遺骨を粉末にする方法は?
海に散骨する場合、ご遺骨は粉末に近い状態に粉骨しなければなりません。自分でできなくはありませんが、簡単な作業とはいえず、精神的にも負荷がかかるので業者に依頼することをおすすめします。
ご遺骨を粉骨するのは、業者に依頼すれば1柱3万円程度で行ってくれます。また、古いご遺骨などの場合は洗浄などが必要となることもあり、その場合は別途に費用がかかります。
海への散骨には許可が必要?手続きをしないとトラブルになる?
海への散骨には許可が必要なのでしょうか。手続きをしないで散骨を行った場合にトラブルになってしまうことはあるのでしょうか。海への散骨を行う場合の許可や手続きについて説明しましょう。
海への散骨には許可が必要?
基本的には、海への散骨に許可は必要ありません。法律上、散骨に関する取り決めがないため、ほとんどの地域では許可を申請することなく散骨が可能です。
ただし、自治体によって散骨に関する条例が制定されている場合もあります。海への散骨を希望する場合は、事前に自治体へ確認しましょう。
手続きをしないとトラブルになる?
海への散骨を業者に依頼する場合には、手続きなどは基本的に業者が行うため、トラブルになることはほぼないでしょう。
自分で手配して散骨を行う場合には、トラブルになる可能性はあります。海への散骨は法的には問題ありませんが、自治体により条例で定められている場合もあるので勝手に散骨すると条例違反に問われます。
海への散骨のトラブルを避けるためには、信頼できる業者に依頼するのが一番です。
海に散骨する場合の費用を安く抑えるには
海に散骨する場合の費用は、通常のお墓を購入するよりはかかりませんが、それでももう少し費用を抑えたいという方もいるでしょう。海で散骨を行う場合の費用を安く抑える方法について解説します。
代行散骨のプランを選ぶ
海へ散骨を行う費用を抑えたいのであれば、代行散骨型のプランを検討するのがよいでしょう。
先ほど説明したように、遺族参加型の散骨プランは、遺族が船に乗船するため費用が高くなります。代行散骨のプランは、遺族が乗船せず業者が散骨をしてくれるので比較的安い費用で利用することができます。
複数の業者を比較する
海へ散骨する場合の費用は、業者によっても違いがあります。海洋散骨を取り扱う複数の業者を比較してみましょう。まずは、資料を取り寄せて費用を比較してみましょう。
海へ散骨する場合の費用は、業者によっても違いがありますが、散骨する海の場所によってかなり異なります。沖縄の海などは高めですが、関東近県の場合だと、比較的安い費用で海へ散骨ができます。
費用の準備として葬儀保険に加入する
海へ散骨する場合、どうしたら費用を抑えられるかを考えるのも大事ですが、万が一のときの負担を軽減するために葬儀保険へ加入することもおすすめの方法です。
葬儀保険の保険金は、葬儀社の互助会積立などと異なり葬儀以外の費用に充てることができます。海へ散骨する際の費用にも使用することができます。
【PR】埋葬費用の負担を抑えたいなら「葬儀保険の加入」がおすすめ
海への散骨など、埋葬時ににかかる費用の負担を抑えたいなら「葬儀保険の加入」がおすすめです。葬儀保険は、本人の死亡の際、保険料が速やかに支払われ、葬儀以外の支払いにも使えるので、埋葬費用の負担を抑えることができます。
無告知型葬儀保険
無告知型葬儀保険は、加入するときに医師の診断書や健康告知などが必要ない保険です。疾病がある高齢の方でも加入しやすいのが特徴ですが、健康告知ありの保険に比べると保険料がやや割高になります。
40歳から79歳まで加入できます。保険期間は1年で、最大99歳まで更新が可能です。プランは1口(10万円)から最大10口(100万円)まで選べます。
【こんな方におすすめ】
- がんや脳梗塞などの疾病で、他の保険に加入できない方
保険料一定型葬儀保険
保険料一定型葬儀保険は、一定の保険料を支払い続ける保険です。支払い保険料が一定である代わりに、年齢が進むにつれ受け取る保険金が減少していきます。
40歳から84歳まで加入できます。保険期間は1年で、最大99歳まで更新が可能です。支払方法は月払いのみです。医師の診断書は不要ですが、入院中や要介護の方は加入できない場合もあります。
【こんな方におすすめ】
- あまり高い保険料は支払ないが、葬儀の費用は少しでも準備しておきたいという方
保険金固定型葬儀保険
保険料一定型葬儀保険は、受け取る保険金が固定されている保険です。年齢に関わらず変わらない保険金を受け取れますが、代わりに年齢が進むにつれ支払う保険料が増加していきます。若い年齢で加入するほど保険料は安く済みます。
40歳から84歳まで加入できます。支払方法は月払いと年払いがあります。医師の診断書は不要ですが、入院中や要介護の方は加入できない場合もあります。
【こんな方におすすめ】
- 年齢はまだ若いが、万が一に備えて葬儀費用を準備しておきたいという方
- 葬儀費用はある程度の額が必要だという方