死後事務委任契約とは | かかる費用とは?起きるトラブルは?

人が亡くなると、行政への届出をはじめ、葬儀の手配などさまざまな手続きが発生します。ひと昔前まで、そういった手続きは家族や親類などが担ってきました。しかし、最近は周囲の高齢化や独身の方も増え、自分自身で亡くなった後のことを準備する必要が出てきています。そんなときに有効な方法として「死後事務委任契約」が注目されています。

「60代のいわゆるおひとりさまです。両親は亡くなり、親戚とも疎遠です。自分が死んだ後に周囲に迷惑をかけたくないので、死後事務委任契約について教えてもらいたい。」このような相談がありました。

この記事を読めば、死後事務委任契約について詳しく知ることができます。

この記事の執筆者

筆者:北原 美弥子

執筆者 北原美弥子

FP技能士2級保持。長年にわたり企業の経理部に在籍した経験から、財務、法務の知識も備える。資産運用、保険に関する記事の執筆に加え、近年は墓じまい、永代供養に関する記事を多数執筆。

目次

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、あらかじめ「委任者」の希望にそって死亡後のさまざまな手続きを行ってくれる「受任者」を契約によって決めておく生前契約のことです。

独身の方や身寄りのない高齢の方は生前の内にこの契約を結んでおくと、自分が亡くなった後のことを心配せずに済みます。

死後事務委任契約で依頼できること

死後事務委任契約は、死亡後の諸手続きについての委任契約ですが、依頼ができることとできないことがあります。

葬儀に関する手続き

  • ご遺体の引き取り、葬儀、埋葬に関する手続き
  • 埋葬、お墓、供養に関する手続き

行政に関する手続き

  • 健康保険証などの返還、年金事務所への連絡
  • 住民税、固定資産税などの納付

お金に関する手続き

  • 病院や介護施設に関する費用の清算
  • 賃貸物件、公共料金の精算、解約手続き

遺品に関する手続き

  • 遺品の整理、処分
  • パソコンやスマホに入った個人情報の抹消

ペットに関する手続き

  • 引取先への引き渡し

死後事務委任契約で依頼できないこと

  • 相続分の指定、遺産分割方法の指定など相続に関する事項は委任できない
  • 認知や遺言執行者の指定など身分関係に関する事項は委任できない
  • 生前のうちに発生する財産管理や身の回りのことなどは委任できない

相続や身分関係に関する事項については、遺言書に記載しておくと法的な拘束力が生じます。このような委任内容があるなら遺言書を作成しておくのがよいでしょう。また、生前のうちの財産管理や身の回りのことについては、財産管理契約や見守り契約、後見制度を併用することで対処が可能となります。

死後事務委任契約を結ぶメリットとデメリット

死後事務委任契約を結ぶ場合には、そのメリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。

死後事務委任契約を結ぶメリット

  • 本人の意思を反映した身辺整理ができる
    死後事務委任契約は、本人の意向を反映した自由な設計ができます。たとえば葬儀形式の希望や遺品の整理も処分方法を遺品ごとに決めておくことができます。
  • 身寄りがなくても身辺整理を依頼できる
    死後事務委任は信頼できる代理人を見つければ、身寄りがない方でも身辺整理を依頼できます。また、親族に頼りたくない方にも有効な方法といえます。

死後事務委任契約を結ぶデメリット

  • 本人の死亡時に契約が終了する可能性がある
    民法によると、委任契約は委任者の死亡によって終了するのが原則です。契約書に「委任者が死亡したとしても契約は終了しない」旨を明示しておく必要があります。
  • 相続人に解除権が相続される可能性がある
    委任契約の委任者はいつでも自由に契約を解除できますが、その解除権が死後に相続され、相続人が勝手に委任契約を解除してしまう可能性があります。

死後事務委任契約は、「本人の意思を反映できる」「身寄りがなくても身辺整理を依頼できる」というメリットがある反面、法律面でのデメリットがあります。デメリットをできるだけなくすために、費用はかかりますが、弁護士や司法書士などに依頼して契約書を作成した方がよいでしょう。

死後事務委任契約を結ぶ際にかかる費用は?

死後事務委任契約を結ぶ際に、費用がどれくらいかかるのか気になる方も多いでしょう。弁護士・司法書士など法律の専門家に依頼した場合の費用を以下に挙げてみましょう。

目安 10~20万

契約書の作成料

死後事務委任契約は口頭での契約も可能ですが、委任者の意向を反映する目的からも専門家による契約書の作成が望ましいといえます。

目安 50万〜150万

死後事務委任の報酬・実費費用

死後の葬儀や納骨等の事務を行ってもらう報酬と実費費用は、委任する内容により大きく変わってきます。

目安 2万

公証役場の手数料

契約書を公正証書で作成する場合に、公証人に支払う手数料です。11,000円の手数料に加えて、正本・謄本代がかかります。

死後事務委任契約で最も金額がかかるのが委任報酬と実費費用です。委任することが多いと100万円以上必要になることもあります。契約を結んだら報酬と実費を併せて預託金として受任者に渡します。また、契約書の作成は自分で行えば費用がかかりませんが、専門家に依頼して公正証書で残しておくほうが安心です。

死後事務委任契約においてよくあるトラブルとは

死後委任契約では、トラブルが発生する場合もあります。主なトラブル例を下に挙げてみます。

死後事務受任者側の破産・事業中止

死後事務委任契約で起きるトラブルで依頼者にとって被害が大きくなりやすいのが、死後事務の依頼を受けた受任者側の倒産や事業の中止です。

このようなケースでは、死後事務委任契約で依頼していた手続きが行われなくなってしまいます。また、預託金として渡しておいたお金も返還されなくなる場合があります。

預託金の返還トラブル

死後事務委任契約の預託金の返還でトラブルに発展するケースもあります。

死後事務委任契約は委任者、受任者どちらの側からもいつでも契約を解除することができますが、その際に受任者側が預託金の一部もしくは全額を返してくれない場合があります。返金トラブルを予防するために、解約時の規定や、預託金の保全についても契約前にしっかり確認しておきましょう。

親族によるトラブル

親族が死後事務委任契約を把握していなかったためにトラブルが起こる場合もあります。

死後事務委任契約は委任者と受任者間の契約なので、委任者が知らせない限りは、たとえ親族であっても契約の存在や内容を知ることはありません。そのため、委任者が亡くなった後に親族と受任者が揉めてしまう場合があります。

上記のようなトラブルを避けるために、死後事務委任契約は安易に契約せず、信頼できる相手を探すことが必要です。また、親族がいる方は、のちに揉めることがないようにあらかじめ通達しておくことが必要といえるでしょう。

死後事務委任契約は誰に依頼するべき?

死後事務委任契約は誰に依頼するべきなのでしょうか。主な依頼先を挙げてみましょう。

知人や親戚など

死後事務委任契約の代理人には特別な資格などは必要ないため、信頼できる友人や知人、親戚などに依頼をすることができます。ただし、契約書はきちんと作成しておいた方がよいでしょう。

弁護士や司法書士

弁護士や司法書士といった専門家に依頼するのがもっともおすすめの方法です。特に、弁護士に依頼する場合は遺言書や相続全般に関してトータルな相談することができます。

社会福祉協議会

死後事務委任契約の代理業務は社会福祉協議会に依頼することできます。ただし、対象となる依頼者は「相続人がいない」「一定以上の預託金が払える」といった条件があります。

民間企業

死後事務委任契約の受任者を民間企業に依頼することもできます。死後事務委任契約を取り扱う民間企業は年々増えてきていますが、1社だけではなく複数の企業を比較して決める方がよいでしょう。

死後事務委任契約の受任者に特別な資格は必要ないので友人や親族でも構いませんが、弁護士や司法書士といった専門家に依頼すれば契約書作成から相続関連の手続きまで見てもらえるので一番安心です。

死後事務委任契約を結ぶ際の流れ

それでは、死後事務委任契約を結ぶ際の流れについて解説しましょう。

STEP
委任先を決める

死後事務委任契約の委任先を探しましょう。委任先は知人や親戚でも構いませんが、契約書の作成などを考えると法律の専門事業者(弁護士、司法書士など)が安心です。

STEP
委任内容を決め、見積もりを確認する

委託先となる事業者と相談し、依頼する死後事務の内容を決定しましょう。その上で費用の見積もりを確認します。死後事務委任契約でできることの範囲内で委任内容を検討し、できないことは遺言など他の方法も合わせて検討しましょう。

STEP
契約書を作成し公正証書にする

委任内容・見積もりに納得したら、死後事務委任の契約書を作成し、公証役場で公正証書化しましょう。公正証書化をしなくても契約は有効ですが、契約の信頼性の担保に重きをおくなら必須です。

STEP
契約書作成費・報酬・預託金などを支払う

死後事務委任契約を締結したら、契約書の作成費など諸々の費用を受任者に支払いましょう。死後にかかる事務の諸経費を預託金とする場合には預託金も支払いますが、死後に遺産で精算する方法もあります。

死後事務委任契約を結ぶのが適している人とは?

死後事務委任契約を結ぶのに適しているのはどんな人なのでしょうか。

  • 独身で頼れる人がいない人
  • 家族や親族に負担をかけたくない人
  • 家族が高齢で頼めない人や家族などと絶縁している人

死後事務委任契約は、自分の死後の事務手続きを委任する契約です。一般的には死後の手続きは遺族が行うものですが、遺族に頼むことができない事情がある人は、死後事務委任契約が適しています。

独身の人や配偶者を亡くしてひとり身の人、家族が高齢で死後の手続きを頼めない人などは、早めに死後事務委任契約を結んだ方がよいでしょう。

死後に家族や親族に迷惑をかけたくない人におすすめの葬儀保険

みんなのキズナ 無告知型葬儀保険
あんしん少額短期保険株式会社

月額保険料【男性】男性保険金
6,365 円(初年度)
年払い:76,380円
600,000円
月額保険料【女性】女性保険金
3,565 円(初年度)
年払い:42,780円
600,000円

【みんなのキズナ 無告知型葬儀保険】の特徴

  • 加入するときに医師の診断書や健康告知などが必要なく、持病がある高齢の方でも加入しやすい
  • 40歳から79歳まで加入でき、保険期間は1年、最大99歳まで更新が可能
  • プランは1口(10万円)から最大10口(100万円)まで選択可能で、支払い方法は年払いのみ
  • 契約日から3ヶ月間は待機期間のため、保険金は支払われない

みんなのキズナ 保険金固定型葬儀保険
あんしん少額短期保険株式会社

月額保険料【男性】男性保険金
16,360
年払い:187,750円
2,000,000円
月額保険料【女性】女性保険金
8,260
年払い:96,250円
2,000,000円

【みんなのキズナ 保険金固定型葬儀保険】の特徴

  • 年齢に関わらず変わらない保険金を受け取れるが、年齢が進むにつれ支払う保険料が増加する
  • 40歳から84歳まで加入でき、保険期間は1年、最大99歳まで更新が可能
  • 受け取る保険金の額は1年ごとの更新時にのみ変更が可能、支払方法は月払いと年払いから選べる
  • 契約日から1ヶ月間は待機期間のため、保険金は支払われない

みんなのキズナ 保険料一定型葬儀保険
あんしん少額短期保険株式会社

月額保険料【男性】男性保険金
3,000366,860
月額保険料【女性】女性保険金
3,000726,550

【みんなのキズナ 保険料一定型葬儀保険】の特徴

  • 年齢に関わらず支払う保険料が一定だが、年齢が進むにつれ受け取れる保険金は減少する
  • 40歳から84歳まで加入でき、保険期間は1年、最大99歳まで更新が可能
  • 支払う保険料は、1年ごとの更新時にのみ増額・減額変更が可能、支払い方法は月払いのみ
  • 契約日から1ヶ月間は待機期間のため、保険金は支払われない

まとめ | 死後事務委任契約とは | かかる費用とは?起きるトラブルは?

この記事の内容をまとめました。

  • 死後事務委任契約とは、「委任者」の希望にそって死亡後の手続きを行ってくれる「受任者」を決めておく生前契約のこと
  • 身寄りのない人や家族に頼れない人は、死後事務委任契約を結んでおいた方がよい
  • 死後事務委任契約は、知り合いや親戚でも依頼ができるが、トラブルを避けるために法律の専門家に依頼する方が安心
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